鎌倉幕府によっていよいよ武士の世が訪れた。戦のない世が訪れるかに見えたが、京では魑魅魍魎の戦いが如く陰謀が渦巻いていた。北条政子の娘である大姫を入内もまたその一手であり、主人公の周子は大姫入内を成功させるために鎌倉へと遣わされた。
この物語は、女たちの戦いを描いている。そして、世の中を動かしているのは女たちであったかもしれない。権力を手にすることが勝利だとすれば、必ずしも勝つことが幸せになることではない。女であるが故に政に使われるより、自ら進んで力を得ようとする人の心も理解できるが、大姫の心のうちが明らかになっていくにつれ、幸せとは何かを考えずにはいられなくなった。
後半は涙してしまうシーンもあり、それぞれの心の行く末を、のめりこむようにして読んだ。周子が政子と対面するラストシーンに少しだけ救われた気持ちになった。
個人的おすすめ度 4.5