コロナウイルス対策の初期、2020年の1月から6月頃までに、専門家会議は何を目指し、どんな活動をしていったのか。また、その周辺環境、特に政府や各行政機関などの動きはどのようなものだったのかを追ったドキュメントである。
誰もが人的被害を最小限に抑えたいと願う一方、誰も正解がわからない中で意見を求められた専門家たち。実際にどうするかという決断は政治が行うことだが、いつの間にかその決定の責任まで負わされているかのようになっていく専門家会議。そして、縦割りからなかなか脱することができない行政、問題をうまく伝えられないマスコミ、それらすべてが日本社会の大きな歪となっていることが、このコロナ問題で表面化してきたように思う。
この作品で描かれたのは2020年6月までだが、その後も本質的な問題は何も解決されていないのだろう。緊急事態と言いながら、その対応の緩慢さであったり、いつまでもそれぞれの立場に固執したり、場当たり的にも見える政策が優先されたり、あるいはメディアも何ら役立つ情報を発信できないままでいる。それでも、最前線で奮闘している一部医療機関の人々や、個々人のモラルによって、なんとか最悪の事態は免れてきたのかもしれない。
コロナが収束したとき、過去を振り返ってきちんと総括し、抜本的に危機管理体制を見直さなければ、いずれ来る危機にもまた同じような問題にぶつかるのだろうと思う。そうならないために、これからどうなるかという受け身的思考ではなく、どういう社会にしていきたいか、そのために何をすべきかを考えていかなくてはと強く感じた。
個人的おすすめ度 3.5