汚れなき子(ロミー・ハウスマン)

交通事故で病院に搬送された女性は、ある男によって少女たちとともに監禁されていた。ハナという少女によると、事故にあったのは彼女の母親レナだという。その名前から、レナは十年以上前に行方不明になっていた女性の可能性があり、その両親である老夫婦が病院へかけた。しかし、それは幸せな再開ではなかった。謎だらけの物語はここから始まる。

監禁されていた女、少女、そして駆け付けた夫婦の夫、この三人の視点から事態の全容が少しずつ明らかになっていくのだが、精神的に辛くなるシーンが多く、人間の怖ろしさを感じずにはいられなかった。何より、その恐さの根源の中に、少なからず理解できてしまう、あるいは共感さえしてしまう部分があるために、読者である自分自身の怖い部分にも気づいてしまうのである。

優れた人物描写、そして目まぐるしく変わっていく展開、どこをとっても素晴らしい作品だが、これが著者のデビュー作というからさらに驚きである。この著者の作品をもっと読みたくなる。ミステリーとしても、サスペンスとしても、あるいはヒューマンドラマとしても評価できる良作だった。

個人的おすすめ度 4.5