六人の嘘つきな大学生(浅倉 秋成)

大学生の就職活動というのは、一歩引いたところから見るとまるで非日常のように見える。企業と大学の騙しあいのようでもあり、裏側から見れば人間の嫌な面ばかりが見えてしまう。物語は某企業の最終面接に進んだ六人が、グループディスカッションに臨んだ時のある事件を描いていく。

人を信じて協力していくという美しい関係は、あることをきっかけに百八十度転換していく。あらぬ方向へと飛躍していくグループディスカッションは、当事者にとっては苦痛でしかないものだろうが、第三者から見れば最高のエンターテインメント、喜劇でしかないのかもしれない。そして、その第三者である読者をも騙し、騙されながら、驚きの結末へと向かっていく。

途中、読みながら恐ろしい読後感になりそうだなと思っていたが、読了した時にはとても良い納得感があり、着眼点も面白かった。また、考えさせられるところもあった。今更、就活する側にも、採用担当側にもなりたくないなと思ってしまったのが正直な感想でもあるが……。

個人的おすすめ度 4.0