老警(古野 まほろ)

警察をはじめとする公務員組織の理不尽さ、引き籠りとその家族に対する社会のあり様、それらへの問題提起も含めた社会派ミステリーである。しかし、この結末に胃が痛くなった私は、ひ弱な人間なのだろうか。

引き籠りの子供のために出世レースから外れた父親。小さな町では、一度レッテルを張られた人間は大手を振っては生きてゆけない。家庭崩壊の現実に直面した父子がたどり着いたのは、取り返しのつかない惨劇であった。

辛い話ではあるが、この物語にはまだ救いがある。刑務部長がその事実を暴き、我々に伝えいるからである。しかし、きっと社会には誰にも知られない本当の不幸が渦巻いているのだろうと想像する。その中には、避けられた不幸もたくさんあることだろう。

本当に地獄に落ちるべきは誰なのだろう。目を背けずに読んでほしい一冊である。

個人的おすすめ度 3.5