他人には見せない痛みを誰もが抱えて生きている。特に大切な存在を失うことは、伝える言葉を失うほどの痛みだ。そんなとき、いつもと変わらない夜空に美しい星があることに気づく。悲しみのない人生では、幸せに気づくことができないのかもしれない。
五編の物語はいずれも喪失の物語だ。自分のことを説明することさえ難しい心の揺らぎが文字の隙間から伝わってくる。まるで自分のことのように感情移入しながら読み、そして一緒に次の一歩を踏み出す。悲しみは一人で抱え込まなくていい、泣きたいときには泣けばいい、時間がかかってもいい、そうして前へ進んでいくんだと思う。
この本を読むと大切な人に会いたくなる。その人もまた、人には見せない悲しみを抱えているのだろう。自分の内面ばかりでなく、相手の心を想像して思いやりをもつこと、そのために本を読むんだろうな。
個人的おすすめ度 3.5