タグ: 朝井まかて

ボタニカ(朝井 まかて)

学術研究で名を残す人の横には、名もなき多くの支えがあった。植物学者・牧野富太郎氏のことはこの作品で初めて知ったが、植物への圧倒的な熱量、絶対的な現場主義、純粋すぎるが故にそれ以外のことにはまったく気づかない鈍感さ、あくま…

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白光(朝井 まかて)

日本人女性として最初のイコン画家となった山下りんの物語。明治初期、絵師を目指すために茨城から江戸へ出たりんは、西洋画と出会い、その道を目指しはじめる。そして、絵を共に学ぶ仲間から、ロシヤ正教の教会へ来れば西洋画を見ること…

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類(朝井 まかて)

森鷗外と妻、そしてその子供たちの生涯を、末子の森類の視点から描いた力作。千駄木の自宅の風景とそこに暮らす主人公らの姿が克明に浮かぶ。鷗外が亡くなってからも、家族の人生は鷗外なくして語られることはなかっただろう。 類は両親…

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輪舞曲(朝井 まかて)

読了後の切ない余韻が心地よい。大正の名女優・伊澤蘭奢(いざわらんじゃ)と、彼女に深くかかわった編集者・内藤民治(ないとうたみじ)、弁士・徳川夢声(とくがわむせい)、児童文学作家・福田清人(ふくだきよと)、そして息子で作家…

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もののけ<怪異>時代小説傑作選(朝井 まかて/小松 エメル/三好 昌子/森山 茂里/家門 七海/宮部 みゆき)

6人の女性作家が描くもののけの世界。人情話もあればホラーもあり、ユーモアを感じることもあれば怖い世界を見ることもあり、もののけの世界でありながら人間の喜怒哀楽が見事に凝縮された短編ばかりである。こうした物語が作られるのは…

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落花狼藉(朝井 まかて)

吉原には人間の清濁を併せ呑むドラマが凝縮されていると思う。その吉原の黎明期にも、当然のように心震えるドラマがあった。涙なくして読めなかった中盤、そして最後の言葉に鳥肌が立つほど感動した。主人公と自分(読者)が重なるかのよ…

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草々不一(朝井 まかて)

江戸の市井の人々を描いた短編は、心に染みる作品ばかりだった。タイトルの草々不一は本を締めくくる作品で、武士とはこうあるべきと頑固に生きてきた男が、妻を亡くしてから大切なことに気づく物語。ラストシーンにほろりと涙が零れてし…

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落陽(朝井 まかて)

明治天皇が崩御され、明治神宮ができた背景を描いた作品で、日本人にとって天皇陛下とはどいう存在なのかを掘り下げた素晴らしい一冊だった。過去にも未来にも日本及び日本人は繋がっている、そういう思いを現代日本人は忘れてしまってい…

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御松茸騒動(朝井 まかて)

今どきのサラリーマン社会と類似している江戸時代の武士の世界。御松茸同心に左遷された若い尾張藩士が主人公。自分は他人より仕事ができるという驕りが行動に表れてしまうのだが、過剰なほどの真面目さでそれを克服していく姿に感じるも…

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