KAPPA(柴田 哲孝)

茨城県の牛久沼には河童伝説がある。その地で、河童が人を殺したという通報が入る。発見された男の体は、何か大きな力で体を引きちぎられた無残な姿であった。犯人像が定まらないまま迷走する事件は第二の被害者が発見される。

この物語の見どころは、事件の真相が明らかになっていく面白さだけではない。個性的な登場人物──事件を追うルポライター、地域で最後の漁師である初老の男、上司にたてつく地元生まれの若手刑事、そして凄腕の釣り技術を持つ少年ら、それぞれの人生を背負って、まるで冒険に挑むかのように事件に立ち向かっていく姿に興奮する。

また、人間の愚かさに対する問題提起もしっかりとされている。なぜこの事件が起きたのか、そしてひとつの問題が明らかになった先に、もっと真剣に考えなくてはいけない根深い問題があることを明らかにしている。

河童とは何者なのか、それを探るべく、ぜひこの本を読んでみて欲しい。

個人的おすすめ度 3.5