明治初期から大正、昭和と、激動の時代を生きた河井道という女性。その視線の先には、すべての人々が平等な社会と、それに基づく世界平和という大きな志があった。女性の社会的な役割を認め、教育機会を作り、地位を向上することは、今な…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
明治初期から大正、昭和と、激動の時代を生きた河井道という女性。その視線の先には、すべての人々が平等な社会と、それに基づく世界平和という大きな志があった。女性の社会的な役割を認め、教育機会を作り、地位を向上することは、今な…
私が子供だった1970年代頃には、まだ上野駅で自衛隊員を募集する人を見かけた気がする。そんな時代に自衛官になった人々を描いた連作短編。国を守る存在でありながら、外を制服で歩くこともできず、名誉や誇りを持つことも難しい時代…
交通事故で病院に搬送された女性は、ある男によって少女たちとともに監禁されていた。ハナという少女によると、事故にあったのは彼女の母親レナだという。その名前から、レナは十年以上前に行方不明になっていた女性の可能性があり、その…
本の奥付には、出版社のほかに、印刷会社や製本会社、あるいはデザイン会社ほか、いろいろな情報が記載されている。映画で関係者の名前がずらりと出てくるあのエンドロールにあたる部分である。そして、奥付には直接は書かれていないもの…
人生はひとつの出会いで変わっていく。それに良いも悪いもないが、ついたらればを考えてしまう。過ぎた過去は変えられないが、未来は変えられるかもしれない。だから、読後もしばらく物語の世界に浸りながら、高瀬庄左衛門やその周囲の人…
コロナ渦の今だからこそ読むべき作品である。 HAVIという技術によって老いることがなくなった人間。しかし、人が死ななくなると社会の新陳代謝が停滞するため、施術から百年後に強制的に死ぬことが求められる。見た目は若いが、超高…
人生に躓いたとき、思い通りにならない時、次の一歩を踏み出すきっかけをくれたのは一冊の本だったかもしれない。しかし、そのきっかけを求める初めの一歩は自分で踏み出したものだ。その一歩がこの図書室に繋がり、少しだけ視点を変えて…
他の鯨には聞こえない声で歌う孤独な鯨がいるという。そのトーンは52ヘルツ。主人公のキナコは、誰にも聞こえない声を上げ続け、孤独の中で生きてきたのだが、やがてその声を聴いてくれる人が現れる。そして、同じように52ヘルツの声…
冷戦の時代、米国のCIAがソビエト連邦に立ち向かうために武器としたものに文学があった。ボリス・パステルナークの小説「ドクトル・ジバゴ」は、ロシア革命を批判しているとして言論統制化のソ連では出版されなかった。そこでCIAは…
今だからこそ感じる人との出会い、そして繋がりの大切さ。表題作を含む五編の出会いの物語は、人の温かさを思い出させてくれる素敵な作品ばかりだった。 「八月の銀の雪」は、就活中の大学生と、コンビニで仕事をするベトナム人留学生の…