検事・佐方シリーズは本当に心に響く。連作短編のそれぞれに正義の物語があり、人が最後に人として踏みとどまる瞬間を感じて涙が零れた。佐方が対するのは、被疑者Aではなく、名前のある一人の人間である。森を見るのではなく樹を見ると…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
検事・佐方シリーズは本当に心に響く。連作短編のそれぞれに正義の物語があり、人が最後に人として踏みとどまる瞬間を感じて涙が零れた。佐方が対するのは、被疑者Aではなく、名前のある一人の人間である。森を見るのではなく樹を見ると…
明治時代になり、文明開化の波が日本の各地にも広がっていった時期、北海道のオベリベリ(帯広)という新天地を目指した開拓者たちがいた。依田勉三が率いる晩成社が選んだその場所は、和人にとっては未開の地であり、アイヌの人々が暮ら…
検事を辞めて弁護士になった貞方は、あるホテルで起きた殺人事件の被告の弁護を引き受ける。一見、ただの男女の諍いのような事件だが、突き詰めていくとまったく異なる景色が見えてくる。 貞方は、罪はまっとうに裁かれるべきだという。…
羽柴秀吉が柴田勝家を破った賤ケ岳の戦いにおいて、武功を挙げた秀吉の近習7人は、賤ケ岳の七本槍と称賛された。彼らはいずれも秀吉によって見出された者たちで、その発展に大きく貢献した者たちであった。しかし、賤ケ岳でも同じく戦い…
伊坂さんらしいユーモアと皮肉に溢れた短編集で、面白さも然ることながら、人としての筋を一本通しているところにも納得の素晴らしい一冊だった。表題作を始めとする各作品のタイトルもよく考えられていて、最後まで読むとこの五編がただ…
警察学校は生半可な気持ちでは卒業できない。しかし、実際の現場に出てから命を削って仕事をしなければならない彼らにとって、ここでの学びは覚悟を決めるための時間でもあるのかもしれない。 警察官になろうとする一人ひとりにドラマが…
ロードレースについては薄い知識しかなく、きちんと見たこともなかった。それでもこの作品の圧倒的な臨場感に浸った。 オリンピックも狙えると言われた陸上選手は十八歳でロードレースに転向し、社会人となってからはプロのチームに所属…
羊毛を織って作るホームスパンは、様々な色に染め毛をより合わせて糸をつくることで、様々な色合いを生み出すことが出来る。それはまるでたくさんの人が互いに繋がって美しいハーモニーを奏でるかのようである。 学校に行けなくなった高…
1996年、新宿ゴールデン街でバー「エル・ビエント」を経営する織部まさるは、クラシックギタリストのファラオナが弾くギターをきっかけに、スペインの田舎町・パロマレスへ向かうことになる。彼女が持っていたギターには、彼の店名と…
硬派な青春小説というと、男くさい世界をイメージするかもしれないが、この作品はまさに硬派そのものである。前作「武士道シックスティーン」で高校一年生だった香織と早苗は二年生となるが、早苗は転校してそれぞれ別な場所で剣道を続け…