コロナ渦の今だからこそ読むべき作品である。 HAVIという技術によって老いることがなくなった人間。しかし、人が死ななくなると社会の新陳代謝が停滞するため、施術から百年後に強制的に死ぬことが求められる。見た目は若いが、超高…
小説を中心に、時々ドキュメントやエッセイも読みます。
コロナ渦の今だからこそ読むべき作品である。 HAVIという技術によって老いることがなくなった人間。しかし、人が死ななくなると社会の新陳代謝が停滞するため、施術から百年後に強制的に死ぬことが求められる。見た目は若いが、超高…
アイドルを追いかける高校生の少女にとって、「推し」は自らの背骨であると認識するほど生活の中心だった。その推しがファンを殴り炎上した。 日常生活も学校生活も何もかも上手くいかない。それでも、推しのことを見ているとき、考えて…
まもなく人類は滅びる──そのニュースが報じられた翌日、虐められていた高校生の少年は、それでも何も変わらない現実を受け入れかけていた。死んでしまいたいと望んだのに、何もできない自分自身に失望しかけていた。しかし、彼には思い…
幸せになるにはどうしたらいいのだろう──正解のない問いをついしてしまう。そもそも幸せって何だろうと考えてみる。明確に答えられないことに焦る。そして、幸せそうな他人を羨み、そんな自分に嫌悪する。 親を理由に仕事を辞めたこと…
人生に躓いたとき、思い通りにならない時、次の一歩を踏み出すきっかけをくれたのは一冊の本だったかもしれない。しかし、そのきっかけを求める初めの一歩は自分で踏み出したものだ。その一歩がこの図書室に繋がり、少しだけ視点を変えて…
他の鯨には聞こえない声で歌う孤独な鯨がいるという。そのトーンは52ヘルツ。主人公のキナコは、誰にも聞こえない声を上げ続け、孤独の中で生きてきたのだが、やがてその声を聴いてくれる人が現れる。そして、同じように52ヘルツの声…
万引き犯を補足する保安士の八木薔子の元へ、かつて不倫関係にあった男の妻が殺害された事件で刑事がやってくる。刑事は彼女に右手を見せてほしいという。薔子は、自身への容疑を晴らすために事件を調べ始めるが、それは大きな事件の一端…
中堅ゼネコンの若手社員である富島平太は、公共工事の受注を担当する業務課に異動する。そこは別名・談合課と呼ばれ、きれいごとでは済まない受注競争が繰り広げられていた。 そこに係る人たちは、談合は必要悪だという。もし談合がなけ…
冷戦の時代、米国のCIAがソビエト連邦に立ち向かうために武器としたものに文学があった。ボリス・パステルナークの小説「ドクトル・ジバゴ」は、ロシア革命を批判しているとして言論統制化のソ連では出版されなかった。そこでCIAは…
千駄木の付近に流れていた心川(うらかわ)。その周囲に人々が住み着いて町となった心町(うらまち)。裏町を心町とするところが人情味のある場所を表している。人には言えない事情があってここに住むようになった人たちは、互いに適度な…