リボルバー(原田 マハ)

そのリボルバーから放たれた弾丸はゴッホの体を貫いた。その瞬間、彼は何を思っただろうか。そして、ゴッホとともに語られるゴーギャン、ゴッホの弟・テオは、彼の死に何を感じただろうか。ひとつのリボルバーをきっかけに、過去が生々しく想像され描かれていく。複雑な美しさで人を魅了するタブローのように。

原田マハさんの作品を読むと、孤高の天才ゴッホを身近に感じるようになる。以前は少なからず狂人のような印象を持っていたのだが、今では人間としてゴッホの魅力に惹かれている。絵画の正しい見方はわからないが、それぞれの絵にも物語を見るようになってくる。

また、この物語を読みながら、ゴーギャンの絵を改めて眺めてみると、素晴らしい斬新さの裏側に浮き沈みの激しかった彼の人生が投影されているかのように思えてくる。絵は描かれた瞬間から変わることはないのかもしれないが、そこに語られる歴史もまた見る者を魅了する要素なのかもしれない。

後半は涙をこらえながら読んだ。残り僅かなページを噛みしめるように捲った。もう少しだけ、彼らの物語の中にいたかったが、今はその余韻の中にいる。

個人的おすすめ度 4.0