JR上野駅公園口(柳 美里)

上野恩賜公園で生活するホームレスの高齢男性。福島県の相馬で昭和天皇と同じ日に生まれた彼は、家族のために出稼ぎで各地を転々とする。戦争を経験し、高度経済成長期を経て、日本の成長を支えた彼が行きついた先は上野だった。

故郷は東日本大震災で大きな被害を被ったが、それでも前を向いて復興に取り組んでいく人々。一方で東京オリンピックの開催が決まり、社会の注目も人手も復興から離れていく。

ずっと日本で暮らしていながら、その居場所を失っていった彼が象徴するものは、私たちの目の前にありながら私たちが見ていない存在なのだろう。

全米図書賞・翻訳文学部門受賞作ということで手に取った一冊。海外の人が知りたい日本の一面というのは、こういうものなのかもしれないと感じた。

個人的おすすめ度 3.5