<あの絵>のまえで 原田 マハ

美術館のある絵の前でクライマックスを迎える六編の物語。寂しい時、後悔した時、人生に行き詰まった時、絵は無言で語りかけてくる。そこで過去を顧みながら、新しい一歩を踏み出していく。

美術館に行って感動する作品に出会えることがあるが、自分自身のその時の心の状況によって心に響く作品は異なるように思う。この作品に登場する人たちが出会う絵は、まさにその瞬間に見るべき絵だったのだろう。そして、この本を読んでいる私自身も主人公に感情を寄せ、美術館でその絵を見たときの感動を共に味わうのである。

絵画というのはこういう力があるんだなと気づかせてくれた一冊。それぞれの舞台となっている美術館──ひろしま美術館、大原美術館、ポーラ美術館、豊田市美術館、長野県信濃美術館、地中美術館──すべての場所に行って、実際に作品のまえに立ってみたい。

個人的おすすめ度 3.5