1ミリの後悔もない、はずがない(一木 けい)

生きていく中で、あのときもし違った選択をしていたら、と思うことはたくさんある。それは今が幸せだったとしても考えてしまうことだ。この物語の登場人物たちのように、重要な決断をする瞬間の痛みがあったり、知らなかった事実を知って「もし」を考えずにいられなくなったり、しかしそれぞれの物語はどこかで読者としての自分自身にも重なっていく部分がある。

五つの物語はそれぞれが重なり合っている。その接点を読みながら、書かれていない心の移ろいや物語を想像する。誰かひとりが別の選択をしていたら、すべての物語は書き換わっていただろうと思う。それを考えることが無意味だという人もいるけれど、考えずにはいられない。

他愛のない若葉のような恋愛もあれば、大人の事情の男女の付き合いもある。親からもらえなかった愛もあれば、永遠と思える愛もある。それぞれ描かれた恋や愛は、他人がとやかく言うものでもない。ただ、それを読んで、何かを感じるだけだ。

読了後、「1ミリの後悔もない、はずがない」というタイトルが腑に落ちた。

個人的おすすめ度 3.5