首里の馬(高山 羽根子)

沖縄の郷土資料館で資料整理を手伝う主人公の未名子は、ある変わった仕事を始める。それは、遠くにいる人たちにオンラインでクイズを出題して交流するというものだった。そして、ある日、未名子が暮らす家の庭に大きな動物が迷い込んでくる。

現代の沖縄、そして戦前・戦中の沖縄は、果たして資料を通じて繋がっているといえるのか。その知識は人を幸せにするのか。クイズで知識を交換し合うことにはどんな意味があるのか。今ある命はどのように燃やしていけばいいのか。

沖縄の穏やかな風景に、時には台風が吹き荒れ、その合間にまた青空が覗く様子は、悲しい歴史を乗り越えて今に至る沖縄を象徴しているかのようである。

物語が終わっても、未名子やその周囲の人々には未来がある──そのことを感じさせる結末であった。

個人的おすすめ度 3.0