風が強く吹いている(三浦 しをん)

箱根駅伝に出場したことのない大学で、古いアパートに住む大学生10人が箱根駅伝を目指す感動のドラマ。走ることは楽しいか、速くなるために走るのか、強くなるために走るのか、一人一人が走る理由を見つけて努力する姿に感動した。

駅伝大会を眺めているとき、出場する選手が走っている姿は見えても、そこまでに至る過程はなかなか想像できない。しかし、この物語はそこに至る物語が描かれ、レース中の情景も臨場感をもって表現されている。選手個人がしっかりと描かれ、それぞれに感情移入しながら読むことができた。

一人も欠けることが許されない10人は、陸上競技未経験者が多数を占め、あまりに無謀な挑戦であるように見えた。しかし、挑戦する者を笑う者は、何もしない者だけだ。この作品を読んでいると、こんなことは現実にはありえないと思いながら読んでいることが恥ずかしくなる。全力を尽くした先に見える世界を、まるで自分が体験したかのように感じられる作品である。

個人的おすすめ度 4.0