顔に降りかかる雨(桐野 夏生)

一億円と共に消えた親友。
その行方と謎を追うことになった主人公・村野ミロは、物語が進むほど魅力的になっていく。
親友の彼氏だという男や、見るからにヤクザの男、親友のアシスタントの女性など、全編にわたって登場する人物の個性が際立っているのはもちろんだが、少ししか出てこないような人々も丁寧に描かれていて印象に残る。

親友がライターの仕事で訪れたベルリンの描写では、壁崩壊後の状況がとてもリアルに感じられる。
また、特異な趣味を持つ人々の集まりに参加するシーンに至っては、それを見てしまう主人公の心境がそのまま伝わってきて、なんとも言えない気分にさせられた。

事件はどうなっていくのだろうか、主人公たちはどうなってしまうのだろうかと、先の展開を想像しながら読んでいたが、ラストの展開は想像を超えていて圧巻だった。
1993年に出版され、江戸川乱歩省も受賞した本作品は、時代を超えて読み継がれるエンターテインメント作品だと思う。

個人的おすすめ度 5.0