雄気堂々(城山 三郎)

日本資本主義の父とされる渋沢栄一の半生は、いつ読んでも心が熱くなる。幕末に生まれ、幕府の在り方に憤りを感じながらも、やむを得ず徳川慶喜に仕えることになるのだが、一つ一つの出会いを無駄にすることなく、ピンチをチャンスととらえて常に前向きに取り組んでいく姿勢が凄い。その根底には、すべての人が幸せになれる社会にしていきたいという大きな志があり、決して消えない情熱が感じられる。

明治に入り、役人として新しい日本の在り方を模索し、さらにその枠に収まりきらずに実用の世界へと身を移していくのだが、その人脈の広がり方がとてつもない。人と人の間を絶妙なバランスでつないで、結果として自ら望むところへと物事を進めていく様子は、ビジネスパーソンとして手本とすべき在り方である。

一方、渋沢栄一とともに描かれている渋沢喜作の人生もまた渋沢栄一以上にドラマチックであり、あるいは悪役として描かれている岩崎弥太郎なども、きっとこの時代を必死に生き抜いたビジネスパーソンであっただろう。現代に繋がる企業も多数生まれていることからも、歴史を学ぶことは自らが生きる社会を学ぶこととイコールであると強く感じた。

この作品は昭和四十七年に刊行されたものだが、今読んでなお色あせることがない。ひとつ感じたことは、明治維新を起こした人々、あるいは徳川慶喜や旧幕府の人々、そのほか多くの人々が日本の発展を強く願い、そのために命を賭したということである。翻って、今の自分自身がどれくらいの覚悟をもって日々を生きているのかと自問自答し、ただ愚痴ばかりを言っていてはいけないなと思うに至った。

個人的おすすめ度 4.0