鉄の骨(池井戸 潤)

中堅ゼネコンの若手社員である富島平太は、公共工事の受注を担当する業務課に異動する。そこは別名・談合課と呼ばれ、きれいごとでは済まない受注競争が繰り広げられていた。

そこに係る人たちは、談合は必要悪だという。もし談合がなければ、誰も幸せにならないというのである。平太の視点で読んでいると、談合を批判したくなる一方、彼らの言い分にも一理あると理解を示したくなる。

一方、談合を必要としているもう一つの存在が政治である。官製談合によって企業を抱き込み、金のかかる政治で自らの支配を強めようとする者がいる。地下鉄工事を巡って官製談合が行われようとする中、平太は苦悩と共に企業人としての行動を強いられていく。

多彩な登場人物たちが、それぞれの立場から正論を吐く姿がとても印象に残る。正義とは何かを問いながら、一級品のエンターテインメントとして楽しませてくれる作品である。文庫本650頁の大作だが、あっという間に読了した。

個人的おすすめ度 4.0