誰かが足りない(宮下 奈都)

割り切れない思いを抱えている六人の物語が六篇の連作短編となって綴られている。それぞれの登場人物はやがて、おいしいと評判のレストラン・ハライへと向かうのだが、構成が非常に巧みで読むべき順番に物語が並んでいる。同じ日に同じ場所にいた他人たちの物語を遡ってみたら、こういう風になるのかもしれない。

ハライというお店が詳細に描かれていないのがまた素晴らしく、そのお店や料理への想像を掻き立てられる。それは、何かが足りないことで幸せを感じることもあるということなのかもしれない。

中江有里さんの後書きを読みながら、各章のを思い返すともう一度感動した。自分に重なる部分が少なからずあったからかもしれない。とにかく最終章を読んだ時の納得感が半端なかった。

個人的おすすめ度 3.5