荒城に白百合ありて(須賀 しのぶ)

激動の幕末、会津士族の女と薩摩士族の男は、それぞれ異なる場所で生きながらも、どこかで互いを意識し続けていた。もし二人が異なる時代に生まれていたら、そこには違った幸せがあったのかもしれない。あるいは、この時代ではなかったら、彼らの居場所はなかったかもしれない。

時代小説を読んでいるにもかかわらず、過去の時代を読んでいるという感覚ではなかった。滅びの美学を求めながらも、人間として生きることを捨てられない彼らの生き様は、恐ろしくも美しい人間の姿を映している。そしてそれは、時代を超えて普遍的な感性だと思う。

新たな時代の幕開けに彼らが見た世界は……。

個人的おすすめ度 3.5