自転しながら公転する(山本 文緒)

幸せになるにはどうしたらいいのだろう──正解のない問いをついしてしまう。そもそも幸せって何だろうと考えてみる。明確に答えられないことに焦る。そして、幸せそうな他人を羨み、そんな自分に嫌悪する。

親を理由に仕事を辞めたこと、今の仕事がダメな責任者のために上手くいかないこと、彼氏がはっきり意思表示しないためにうまくいかない恋愛関係。すべて自分ではどうにもできない他人のせいで、自分の人生は空回りする。でも、あるとき気づく。幸せそうに見えていた誰かも、そうではないことがたくさんあって、なおかつ努力しているということ。

この物語に出てくるエピソードは、どれも身近なものばかり。だから歯痒く思ったりしながら共感できる。何か大きな事件が起きるよりも、日常というのはこういうことなんだろうと実感する。人が人として一歩ずつ成長していく過程が描かれ、プロローグからエピローグへの流れが違和感なく腑に落ちた。

個人的おすすめ度 3.5