聖なるズー(濱野 ちひろ)

人は動物を恋人と同じように対等に愛すことができるのか。
動物との性愛について調べ始めた著者出会ったのは、まさに動物をパートナーとして真剣に生きる人々ズーであった。

人間と同じように動物にとってもセックスの問題があるという観点や、セクシャリティの追及、あるいは人間にとってセックスがどのようなものかといった問題提起は、簡単なようでとても難しい。単純ではないし、一人ひとり違うということを互いに受け入れなければ理解できないこともある。

ズーと、ビースティ(獣姦愛好者)、ズー・サディスト(動物への性的虐待者)との違いについて、ズーが動物と愛をもって理解しあうことを目的とし、その結果として動物との交わりがあるのに対し、ビースティは愛情を持たず動物とのセックスだけを目的とし、ズー・サディストは動物を苦しめることを目的としているという。これは人間同士でも同様のことが言える。性的暴力が顕在化すればわかるが、そうでないケースも多いのではないかと思う。

マイノリティが抱える問題を、「それはそれでいいんじゃない?」と他人事のように無視する人もいるが、それは彼らを批判する人と大差ないかもしれない。本書は、その問題が他人事ではなく、寄り添って考えるべきことなのだと気付かせてくれた。

個人的おすすめ度 3.5