素敵な日本人(東野 圭吾)

バラエティに富んだ九本の短編はどれも外れなし。そつのない面白さは流石としか言いようがない。

皮肉な話もあれば、心温まるいい話もあるが、本書のタイトル「素敵な日本人」の通り、人間の不完全さが素敵なドラマを織りなしている。互いに完璧ではないからこそ、時には激しく憎みあうこともあり、足りないからこそお互いを思いやることもできるのだと思う。

この中で特に気に入った作品は、娘の結婚に際して亡き妻を思う「今夜は一人で雛祭り」、疑似的な子育てを体験する「レンタルベビー」、そして勘当された息子と余命宣告された父を描いた「水晶の数珠」。それぞれの結末が本当に印象的で、特定ジャンルには収まらない発想の広さが凄い。

手軽に楽しめる作品ばかりなので、こういう本はいつも一冊はカバンに潜ませておきたいものである。

個人的おすすめ度 3.5