紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている(佐々 涼子)

本が好きな人は読むしかないという渾身の一冊。カバンの中にKindleを入れているが、基本的には紙の本を読みたいと思っている。紙に触れ、紙やインクのにおいを嗅ぎ、ページを捲り、栞やスピンを挟みながら楽しむひと時はとても贅沢な時間である。

しかし、紙の本が危機に陥った時があった。2011年3月11日、東日本大震災が日本製紙石巻工場を叩きのめした。そこにあった人々の暮らしが一瞬にして崩れたことは言うまでもないが、この工場で作られていた紙が供給されなくなることは、多くの本が出版できなくなることを意味していた。

被災地の復興にはとても長い時間がかかる。当然、大規模な工場を再生するためには、とてつもない労力と時間、そして諦めない人の心が必要なのだろう。石巻工場の再生は、単なる一つの工場の再生の物語ではない。地域の人々や関係者、そしてこのことを知った私たちをも勇気づけてくれた。きっとこの本に書ききれなかった沢山の苦悩があり、見えないところで頑張った人たちがいたことだろう。

これまで本を読むときに、作家や編集者のことは想像してきたが、紙を作る人のことまで想像したことはなかった。しかし、このドキュメントを読んでしまうと、紙の触感に喜びを感じるようになる。出版不況と言われて久しいが、まだまだ紙の本の文化が廃れるには早すぎる。もっと本を読もう。

個人的おすすめ度 4.5