約束(石田 衣良)

生きている限り明日が来る。その明日が辛くて、自分の生きる価値がわからなくなる時がある。あとから振り返ってみると、前を向けるようになったきっかけは誰かの温かさだったりする。そして、その温かさはずっと前から寄り添ってくれていたものだとわかるようになる。気づいたときには、感謝すべき相手がいなくなっていたとしても。

七編の短編は心がじわりと温かくなる作品である。主人公たちが前を向けるようになる瞬間までを描いたものばかりで、描かれていない主人公の未来に、読者としての自分の人生を重ね、希望ある明日をイメージすることができる。つまり、生きる活力をもらうことができた。

表題の「約束」は、客観的にみると本当に辛い話だが、その中にさえも希望を描けるのが石田衣良という著者の素晴らしさである。人生をかみしめたくなる読後感の良い一冊だった。

個人的おすすめ度 3.5