破局(遠野 遥)

自分は何者かであるかを深くは考えず、ただ何者かではあるのだろうと漠然と信じて、ただ本能のあるがままに日々を過ごす学生時代。何も考えずに熱くなれたラグビーがあったのはついこの前のこと。前の彼女と、今の彼女、自分にとって都合のよい存在かどうかは考えても、彼女たちにとって自分がどうであるかは考えない。そういう日常。

今どきの若者という言葉は、いつの時代も使われる。そして、実は若者はたいして変わっていないのではないかと思う。そうして大人になったつもりで、あるとき自分であったと思っていたその形は崩壊し、何物でもなかった自分に気づくことになる。破局の痛みを乗り越えられればいいが、現実逃避してしまうこともできる。主人公は見上げた空に何を思っただろう。

私自身も、多くの若者と同じように、そんな空っぽな人間だった時代があった。そのことをすぐに受け入れられたわけでもなかったが、それでも今を生きていられるのは、その空虚さを共感してくれる人がいたからだ。主人公にとって、彼女たち、あるいは先輩、後輩、いずれもその思いは得られなかったように思う。

久しぶりにそうした感情があったことを思い出した。
瑞々しさとは違った若さ故の虚無がそこにあった。

個人的おすすめ度 3.5