海の底(有川 浩)

冒頭から巨大なザリガニの群れが横須賀に襲来する。これはとんでもない本を読み始めてしまったと思ったが、読み進むうちに不安は期待に変わり、主人公らの魅力に引き込まれた。

停泊する潜水艦に逃げ込んだ自衛官の夏木と冬原、そして子供たち。閉鎖的な空間の中で様々な問題が発生する。一方、地上では機動隊と自衛隊が巨大なザリガニとの攻防を繰り広げるが、現場と懸け離れた指導者たちと比べて、現場やそれに近いところで戦う者たちのかっこよさが光る。

一見するとありえない設定であるにもかかわらず、登場する一人一人が丁寧に描かれていること、そして細かい設定がリアルに描かれていることで、むしろ現実に即した物語であると感じるのは、著者の圧倒的な力量によるものだと思う。

スリリングな展開を堪能できるエンターテインメント作品だった。

個人的おすすめ度 3.5