死にたい夜に限って(爪 切男)

主人公の男の、恥ずかしくも切ない半生を描いたコメディ作品。
大人になりきれない作家志望の男は、ミュージシャンを目指す彼女と一緒に暮らしはじめる。
彼の恋愛は、どろどろした恋愛ではなく、どちらかというと中学生の恋愛のような感覚だなと思うが、そのためかほかの女にふらふらしたり、風俗へ通ったりと、よく言えば自分の人生を模索しながら楽しんでいる。
一方の彼女は、ある意味ではアーティストらしく我が道を行く人で、どうにかして世の中生きて行けるんだろうなと思うような女性である。
お互いになかなか殻を破れずに、悶々とした日々が続いていくが、それはそれで楽しい日々に見えた。
そして、私たちの日常もそんなものかもしれない。

主人公のことを、しょうもない奴だなと思いながら読んでいたが、最後に彼女が彼の一つしかない“いいところ”を伝える。
「どんなに辛いことがあっても『まぁいいか』で済ませられるところだね。」
この一言、まさに私自身のことだと思った。
人生なんて、おおむね喜劇なんだろうと理解した一冊だった。

個人的おすすめ度 3.5