楊家将(北方 謙三)

十世紀末の中国大陸は宗の時代であったが、北方の遼とその領土を争っていた。楊家(ようか)は、純粋に戦いのために生きるような一族で、その強さは宗、遼、いずれからも一目置かれる存在であった。この物語は、両国の争いの中で、楊家の長・楊業やその息子たちが活躍するのだが、彼らの生き方がとにかく熱い。戦に生きる者としての心構えに圧倒される。

一方、楊家以外の登場人物たちの人間性もしっかりと深堀りされている。それぞれがなぜそのような選択をするのかという動機付けがしっかりと伝わり、歴史というのは個々の人間の行動が積み重なった結果だということを改めて感じる。楊家の者たちは当然かっこいいのだが、彼らと対比して描かれる耶律休哥という将軍や、遼の国の実質的な指導者である蕭太后の人としての在り方にも目を引かれる。

クライマックスの戦いの連続はもう圧巻としか言いようがなく、何があっても読むことを止められなくなるほど没頭して一気に読んだ。中国では、三国志、水滸伝に並ぶ物語だということだが、恥ずかしながら本作に出会あってはじめて楊家将を知った。この本に出会うことができてよかったと思う。続編も出ているので、さっそくそちらも読ませていただきたい。

個人的おすすめ度 4.5