本のエンドロール(安藤 祐介)

本の奥付には、出版社のほかに、印刷会社や製本会社、あるいはデザイン会社ほか、いろいろな情報が記載されている。映画で関係者の名前がずらりと出てくるあのエンドロールにあたる部分である。そして、奥付には直接は書かれていないものの、多くの関係者の協力があって初めて一冊の本が出来上がっていくのだと思う。印刷会社を舞台としたこの作品を読むと、ますます本が好きになり、今すぐ本屋へ行ってページを捲りながら素敵な本との出会いを楽しみたくなる。

5章にわたる物語の中で、印刷会社の営業担当、進行担当、制作担当、印刷担当ほか、様々な役割の個性的な面々が登場し、また、出版社の担当や作家、あるいは製本会社の人たちなど、それぞれの立場から思いをぶつけあって本が出来上がっていく様が熱く描かれている。その姿にはたびたび心を打たれ、やはり紙の本がいいなと思わずにはいられなくなった。

そうは言いながらも、電子書籍を取り上げた章では、より的確に出版という世界がおかれた状況を分析し、紙の本と電子書籍は市場をどう両立して出版業界を盛り立てていくのかということが描かれている。私も電子書籍端末で本を読むこともあるので、一概にどちらが良いという話ではなく、より物語に触れる機会が増えたと前向きにとらえて、相乗効果で市場が拡大していけばいいのではないかと思っている。

いずれにしても、この一冊を読んだ後は、きっと本を読むたびに本のエンドロールを見るという習慣ができることだろう。奥付=エンドロールにももう一つの物語がある。本好きとしてはたまらない一冊だった。

個人的おすすめ度 4.5