木曜日にはココアを(青山 美智子)

東京とシドニーを舞台にした十二の短編は、老若男女様々な主人公が幸せなひと時を感じさせてくれる。

カフェの青年、いつも手紙を書く常連の女性、そして二人をつなぐ温かいココアの香りが伝わってくる。偶然そこに座っていたお客さんのこと、手紙の先に繋がる人のこと、ほかの人が飲むココアを見た人のこと、少しずつ重なる人生の集大成で世界はできている。

それぞれの物語の中には、幸せに気づくための瞬間が用意されている。どの瞬間が自分の心を弾いてくれるのかは読む人によるだろう。何気なく読んできて、最後の最後で私の心に一本の矢が刺さった。こういう素敵な気分を味わうために小説を読んでいるんだなとしみじみと思う。

明日の朝は、私もカフェでココアを飲もうかな。

個人的おすすめ度 3.5