最低。(紗倉 まな)

四つの短編は、それぞれが女性たちの物語。母や姉との相いれない生き方の違いを描いた1章、仕事としてAV女優をしながら、AV会社を経営する彼を支える2章、セックスレスとなった夫との関係に不満を感じながらAVに出演する3章、そして母や祖母、そして顔も知らない父との関係を描いた4章。

切なさや哀しさ、その中で感じる幸せが、文字からも行間からも溢れてくる。後書きにはこの作品を書くに至った著者自身のことも書かれていて、そこまで含めて一つの作品である。

読み終えると、ちょっと冷めかけた紅茶を飲んだときのような、美味しいけれど完全には満たされない不完全な心地よさが残る。すぐには消化しきれないからこそ、この感覚は心に留まり続けるのかもしれない。

全編を通じてアダルトビデオがキーワードになっているが、この作品には裸の人間の生々しさはあっても、下心のようないやらしさはまったくない。むしろ人としての潔さや美しさがある。主人公たちを素直に応援したいと思えた一冊だった。

個人的おすすめ度 3.5