掃除婦のための手引き書(ルシア・ベルリン)

ルシア・ベルリンの小説は、いずれも著者の人生の一部を切り取って脚色した作品だという。本書に収録された二十四編の短編は、それぞれの楽しみもあるが、読むほどに著者や家族、出会った人々などがリアルに感じられるような気がする。アメリカや中南米での生々しい生活が、ユーモアと悲しみを交えて綴られている。

表題作は、掃除婦が感じる日々の小さな不満や喜び、そして悲しみが滲んでいて、その結末が心に刺さる。アルコール中毒の母親や叔父、そして主人公など、アル中の大変さと悲哀、それでも愛さずにはいられない人の姿も印象的であるし、そうした人々の中で子供たちはそれを受け入れて逞しく生きてく様子も心に残る。

とにかく作品すべてがルシア・ベルリンの人生の結晶だと思って読んだ。この一冊には収録されなかった短編も多数あるとのことで、それらも翻訳されたらぜひ読んでみたいものである。どの作品が心の琴線に触れるかは、読むときの自分の状況によって異なるだろう。時間をおいて、何度も読み返したい一冊である。

個人的おすすめ度 3.5