戦場のアリス(ケイト・クイン)

1947年、主人公の女性シャーリーは、第二次世界大戦で行方不明になった従姉を探すためにある人物を訪ねる。
それは、第一次世界大戦中にスパイとして活躍した女性イヴだった。
物語は、第一次世界大戦当時のイヴの視点と、1947年のシャーリーの視点を行き来しながら、やがてその接点が明らかになっていく。

イヴが属するスパイのネットワーク、アリスネットワークは実在したもので、登場する多くの人が実在の人物をモデルとしている。
そして、多くの出来事もまた、実際に起こったことを下地として描かれている。

スパイの仕事はいわば裏稼業であり、表立って称賛されることより、蔑まれることの方が遥かに多いだろう。
それでもなお、信念をもって立ち向かっていく彼女たちの姿は、人間としてかっこよく、美しい。

一方、そうした彼女たちの姿を知っていくシャーリーは、親から自立して大人へと成長していく。
きれいごとを並べるのではなく、実社会で人間として生きるというのはこういうことなのだろうと納得せざるを得ない。

読み終えてしまうのが惜しい、素晴らしい一冊だった。

個人的おすすめ度 5.0