戀童夢幻(木下 昌輝)

戦国の浮世に、加賀邦ノ介という一人の踊り手が現れた。織田信長、明智光秀、千利休、豊臣秀吉、徳川家康、彼らの心を捉えるその踊りは、世をかき乱すものだったのか。そして、邦ノ介が追い求めたものとは……。

この物語では、戦国の武士の世界における衆道、つまり男同士の世界が描かれる。現代とは死生観も何も異なる時代において、人が人を思うという気持ちは命を懸けたものであったかのかもしれない。各章において異なる人物からの視点で描かれた物語は、邦ノ介という存在にとってかき乱される複雑な人の心を描いている。

さらに、もっと大きな世界観として、社会がどうあるべきかという訴えも邦ノ介を通じて明らかになっていく。それは戦国の世だけでなく、現代にも共通した課題である。

邦ノ介とは一体何者なのか、それが明かされたときの衝撃を、この本を読んでぜひ感じてもらいたい。

個人的おすすめ度 4.5