想像ラジオ(いとう せいこう)

想ー像ーラジオー。

番組の高らかなジングルが想像という電波に乗って聞こえてくる。

杉の木のてっぺんから放送を始めることにしたDJアークは、自分の家族の話をしながら、たくさんのリスナーの声を届け、そして素敵な音楽を流す。その彼の目的は……。

東日本大震災で、たくさんの命が失われた。亡くなった人がどんな思いでいるのか、そのことを想像するのは意味のないことだろうか。この世界は、生きている者のためだけにあるのだろうか。

「生者と死者は持ちつ持たれつなんだよ。決して一方的な関係じゃない。どちらかだけがあるんじゃなくて、ふたつでひとつなんだ。」という言葉にふと気づく。そして、「亡くなった人の声に時間をかけて耳を傾けて悲しんで悼んで、同時に少しずつ前に歩くんじゃないのか。死者と共に」という言葉に共感する。

想像ラジオは、聞こえる人と聞こえない人がいる。だから、できることなら私はそれが聞こえる人間でありたいと思う。

DJアークがその目的を果たした時、想像ラジオはどうなるのか。それはぜひこの本を読んで確かめてほしい。

個人的おすすめ度 3.5