彼方の友へ(伊吹 有喜)

明治から昭和中頃まで出版されていた少女の友(実業之日本社)という少女向け雑誌がある。
この本は、この雑誌に関係した人々の思いが込められた素敵な物語である。

昭和十二年から昭和二十年という激動の時代、主人公のハツはこの雑誌作りに携わるようになっていくのだが、戦争の中でもがきながらも、希望を守り続けようとする姿勢が素晴らしい。
そこには、編集者や執筆者、その支援者、そしてもっとも大切な友(読者)の存在が欠かせない。

途中に出てくるフラワー・ゲームを調べたり、アニーローリーの歌を調べて聴いたりしてみると、より臨場感が増して、自分もその場にいるような感覚を味わうことが出来た。

高齢になったハツさんが迎えるラストシーンには、自然と涙が零れてしまった。

個人的おすすめ度 4.0