天上の葦(太田 愛)

渋谷のスクランブル交差点で、高齢の男性が天を指した直後に絶命した。興信所の鑓水の元へ、この男性が最期に見たものが何かを調べてほしいという依頼が来る。鑓水は、修二とともにこの事件を調べ始める。

一方、謹慎中の警察官・相馬の元には、行方不明になっている公安職員の捜査が命じられる。その行方を辿っていくと、二つの事件が別々のものではないことが明らかになっていく。

三部作の集大成となる本作品は、今まで隠されていた鑓水の過去も明かされ、三人への共感がさらに強くなった。そして、理不尽と戦う彼らの姿の背景に、日本社会が抱える大きな問題が見えてくる。

相変わらず息もつかせぬ展開で、臨場感あふれる物語に没頭し、次々と頁を捲り続けた。読み終えてなお、彼らが目の前に存在しているかのように感じる。読み応えのあるシリーズの完結編のようだが、続編を読みたい気持ちが止まらない。

個人的おすすめ度 5.0