塞王の楯(今村 翔吾)

戦国時代、石垣施工の技能集団・穴太衆。その中でも、石垣を築く技術を持った天才を人は塞王と呼んだ。穴太衆の若きリーダーとなった匡介は、絶対に破られない石垣を造れば、戦国の世を終わらせることができると考えていた。

一方、鉄砲職人集団の国友衆にも一人の天才技能者がいた。 国友衆のリーダー・彦九郎は穴太衆の石垣を破るような圧倒的な武器を生み出せば、それが抑止力となって戦国の世は終わると考えていた。

戦国の世の盾と矛、互いに極めるところは「矛盾」の対立であるが、目指す場所は太平の世であった。そして、戦国末期、ついに二人の天才が相まみえることになる。

矢じりや鉄砲が飛び交う籠城戦の最中でも、石を積み上げて城を護る職人たちの命懸けの仕事ぶりはまるで鬼人の群れようである。彼らを支えるものは、職人としての誇りと、そして守りたい人々の姿であろう。クライマックスでは、迸る汗すらも見えるかのような臨場感ある攻防に圧倒された。

個人的には、私の中にあった京極高次という武将のイメージがこの作品で刷新された。今村祥吾氏の作品を読むと、こうした新しい視点をもらうことができるのも面白い。楽しみながら学びもあった一冊である。

個人的おすすめ度 4.5