八本目の槍(今村 翔吾)

羽柴秀吉が柴田勝家を破った賤ケ岳の戦いにおいて、武功を挙げた秀吉の近習7人は、賤ケ岳の七本槍と称賛された。彼らはいずれも秀吉によって見出された者たちで、その発展に大きく貢献した者たちであった。しかし、賤ケ岳でも同じく戦い、その後の豊臣家の発展を支えたもう一本の槍があった。八本目の槍、石田三成である。

この物語は、七本の槍の一人ひとりの視点から、彼らが互いに切磋琢磨して成長し、やがてこの国を変えていくようになるまでを描いた作品である。三成の視点から描かれる章が存在しないが、その存在感は圧倒的である。

虎之助(加藤清正)、助右衛門(糟屋武則)、甚内(脇坂安治)、助作(片桐且元)、孫六(加藤嘉明)、権平(平野長泰)、市松(福島正則)、そして佐吉(石田三成)の八人は、互いに言いたいことを言い合える素晴らしい仲間であった。それぞれの人生はみな一筋縄では語れず、それ故に読んでいて涙してしまうシーンもあった。

皆性格も気性も違うのだが、それぞれに感情移入してしまうのは、著者の表現力の高さによるところだろうか。読み終えた瞬間に一抹の寂しさも感じる。彼らが今の時代にはいないと気づくからである。

個人的おすすめ度 4.5