元彼の遺言状(新川 帆立)

過去に付き合っていた彼が、不可解な遺言状の残して死んだ。自分のことを殺した犯人に巨額の財産を譲るというというのである。弁護士である主人公は、その財産の一部を得るため、犯人として名乗りを上げたクライアントの代理人として関係者の前に立つ。元彼の死と遺言騒動の行く末を描いたミステリーは、『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作に相応しい、スピード感あふれるミステリーだった。

設定の面白さに加え、主人公たちのキャラが際立っている。強烈な印象を残す主人公だけでなく、特に女性陣が素晴らしい。いわゆる昔からの女性像というのを見事に打ち破って、それぞれが強い個性を放っている。また、元彼の親族やその周囲の人々に至るまで、これだけ多数の登場人物が描かれていながら、混乱することがないのは凄いことである。

現実にそんなことがあるのかなどという下らない感情は捨てて、このエンターテインメントにどっぷり浸かって一気に読み切りたい一冊。これが映像作品になったらどんな役者さん役をやるのかなと妄想して、今、一人でほくそ笑んでいる。

個人的おすすめ度 3.5