人間(又吉 直樹)

主人公の永山が何者かであろうとして考え、行動することに共感すると、そのあとでその共感が凡人の域を出ないことを指摘される。そこには情けなさがあり、でも凡人であることを受け入れてしまう自分がいる。
本を読みながら、そんなことが繰り返された。
芸術家を目指す同居人たち、通り過ぎていく彼女たち、破天荒な父とそれを自然に受け入れる母など、永山の周囲には決して凡人でない人たちがたくさんいる。
自分は凡人だけど、それでいいじゃないかと思う人間の自分がいる。
大きな事件が起きる物語ではないが、こういう著者の感性は結構好きだ。

個人的おすすめ度 3.5