人間滅亡的人生案内(深沢 七郎)

学生運動が盛んだった時代だろうか。若者たちの悩み相談的な投稿に、逆説的な皮肉も込めて応える深沢七郎の言葉。著者の意見に納得したり、あるいは自分は違うなと思ったり、そうやって読み進めているうちに、ただただ純粋に生きようと思えるようになる。

そもそも動物なんて悩まずただただ生きているのに、人間だけが何で悩む必要があるのか、という。一方、欲もなくただ生きていければそれでいいという相談には、その考え方こそ他人を搾取して生きようとする恐ろしい考えだと指摘する。生きる理由がわからないといった人には、悩むことがそもそもナンセンスだと言い、恋の悩みには単純明快に行動を促す。

模範的な回答が欲しいのであれば、質問をする時点で答えは予測できてしまうだろうから、そんなものは面白くもなんともない。必要なのは自分で考えるためのきっかけだ。人生に悩んだとき、落ち込んだとき、この本をつらつらと読みながら、ふと今も生きている自分に気づくのである。

個人的おすすめ度 3.5