ワンダフル・ライフ(丸山 正樹)

事故で障碍者となった妻と、その介護をして暮らす夫。それから、CP(脳性麻痺)の男性と、ネットで知り合った女性のこと。彼らから見えるのは、障碍者が同情される者ではなく、同じ一人の人間として、共に社会に生きる人間として見たとき、どんなことを求めて生きているのかということである。

ノーマライゼーションという考え方が言われてもうずいぶん経つが、社会はまだそのことを受け入れているとは言い難い。それは、障碍ということだけでなく、人種差別、性差別など、あらゆる面で多様性を前提とした社会構造にはなっていないように思う。実際にマイノリティとされる人と直接知り合って仲良くなれば、そこに上も下も何もないということはわかるのだが、お互いに意識している壁がまだ少なからずあるのかもしれない。

この作品の中には、障碍を持っている方であったり、身近に障害を持った方がいる方にとっては当たり前のことが書かれているのだろう。しかし、そうした環境にない方にとっては、この本が当たり前のことに気づくきっかっけになるかもしれない。そして、そこから「考える」ということが始まるといいのではないかと思う。

私自身が偉そうに何か言える立場ではなく、むしろ気づきが足りない側の人間だ。だからこそ、こうした作品を通じて人の内面を想像する力を養うことも大切だなと感じた次第である。

個人的おすすめ度 3.5