ワイルド・スワン(ユン・チアン)

激動の中国を生き抜いた著者の曾祖母、祖母、母、そして自身を中心とするドキュメント小説。

【上巻】
1909年~1953年までが描かれているが、共産党が台頭してくる時代の臨場感が伝わってくる。
女性が虐げられた時代から平等の時代へ向かうが……。

【中巻】
1953年~68年、大飢饉が人為的に引き起こされ、やがて文化大革命へと繋がっていく中国の実態が描かれている中巻。
恐怖はやがて他人を痛めつける快楽を齎すのか。
何も考えない人間を増産する洗脳の怖さ。疑問を感じ、考える人間は悉く排除されていく。

【下巻】
1967~78年を描いた下巻は、文化大革命の波がどのように収束へ向かっていったか、そしてその中で著者や家族がどのような運命を辿ったのかが描かれている。

全編を通して共産党時代の中国を知る貴重な作品。現在の香港問題を考える一助にもなると思う。

個人的おすすめ度 4.0