ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち(ブレイディみかこ)

イギリスの労働階級のおっさんたちを描いたドキュメントだが、彼らの生き方から社会全体の在り様が見えてくる。特に、ブレグジット(EU離脱)を巡る人々の考えが結構深堀されていて、気づかされることがいくつもあった。労働党を支援してきた労働者階級の人たちが、なぜ離脱を支持したのかという背景は、表層的なメディアの報道ではわからなかった生の人間の声があった。

実際、個人を見ていくとその価値観は多様で、女や酒にだらしない人もいれば、ものすごくパワフルに生きている人もいるし、破天荒な生き方をしている人もそれなりにいる。そして誰もが愛すべき人であり、大切な社会の一員である。

読みながら笑ってしまうことも多々あり、笑いながらふと気づくと、それは自分自身にも言えることだったりする。そりゃそうだな、同じおっさんだもんな、と思ったりして、妙に親近感を感じてしまった。

後半部分には、イギリスの階級社会の現状がとても分かりやすくまとめられている。ストリクトな階級社会で育ってきた人間の意識はなかなか変わらないが、社会構造は急速に変化していて、そのギャップが生まれていることが理解できた。そこには、イギリス独自の問題もあるが、日本にも共通する点も多くあり、世界の縮図を見るような気がした。

こんな本を書けるブレイディみかこさんも、おっさんの心を持っている人なんじゃないかなぁと、失礼な感想ではあるが、親近感を感じた次第である。

個人的おすすめ度 4.0