ランチのアッコちゃん(柚木 麻子)

痛快すぎる4つの短編には、いずれも今を生きる素敵な女性たちが登場する。彼女たちには、踏まれても踏まれても何度でも起き上がる強さがある。

「ランチのアッコちゃん」「夜食のアッコちゃん」は連作で、派遣社員の主人公と、先輩であるアッコさんが奮闘するのだが、アッコ先輩のカッコよさはこの上ない。昔を知る人が梶芽衣子バリだと表現するのだが、まさにそんなイメージである。そして、その傍で主人公が劇的に成長していく姿にワクワクする。

「夜の大捜査先生」では、三十路となった主人公が、高校時代の先生と出会い、渋谷を走り回ることになるのだが、そのドタバタの中で自分自身の立ち位置を確認していく物語である。後半にさりげなくアッコさんが出てくるところでは、ついほくそ笑んでしまった。

最も心に響いたのが最後の「ゆとりのビアガーデン」。これは男性こそ心にグサリと刺さるストーリーだと思うが、ダメ社員だった主人公が前向きに頑張っていく物語だ。読み終えたときには主人公の言葉を何度も反芻したくなった。

ちなみに、特に前半二編は食べ物の描写が食欲を掻き立てるので、夜に読むときは要注意(笑)。何か食べながら読むとちょうどいいかもしれない。心も体も栄養満点のビタミンで満たされる一冊であった。

個人的おすすめ度 4.5