「世の中で一番価値のない男」が、生きる価値を見出したものは、恋だったのか、狂気だったのか。決して届かない思いの結末は悲劇なのか、それとも幸福の欠片があったのだろうか。
ハンディキャップを背負い、容姿にも強いコンプレックスを抱いている主人公・鈴木誠は、あるきっかけで出会ったモデルの女性・三縞絵里と出会い、深く思いを寄せるようになっていく。その思いはやがてストーカーの様相を帯び、恐怖を感じる展開が待っている。
一方、主人公が誰にも愛されず、否定され続けて生きてきた過去は、辛いという言葉では到底言い表すことのできない人生であったことだろう。彼にとって地獄とは、現実よりいい場所であった。
タイトルのラバー・ソウルは、ビートルズの名アルバム「Rubber Soul」から来たもので、各章の題が曲名となっていて内容を暗示している。主人公はビートルズマニアで、雑誌にも記事を掲載していて、時々出てくるビートルズの知識も興味深かった。
この本を読んでいない方のためにこれ以上のストーリーは書けないが、読んで後悔することは決してないだろう。
個人的おすすめ度 4.0