ミッドナイトスワン(内田 英治)

性同一性障害者は「障害者」と言われる社会。男、女、それしか普通だと言えない狭量な社会のほうに障害があるのではないだろうか。

主人公の中に芽生えた感情。女性であるということとの中に、母になれるということ含まれるのではないかという希望。護りたい他者の存在は、自身が前向きに生きていく糧となるが、同時に人を盲目にさせることもある。しかし、後悔のない人生を送ることができたら、それは幸せなことかもしれない。

終わりがあることなど忘れて過ごす夢のような時間。白鳥から美しい女性へと姿を変え、最高の舞台で舞う幸せ。たとえそれが永遠ではなかったとしても、そして後に激しい痛みを伴うとしても、一生白鳥のままで暮らしていくことはできなかった。

哀しく切ない作品だが、一人の人間として共感できる物語だった。

個人的おすすめ度 3.5